ナビレンス プロジェクト 概要紹介
はじめに
ナビレンス プロジェクトは、視覚障害者が未知の環境であっても自立的に第三者の助けを借りずとも、自由に移動を行えるよう支援する必要性から生まれました。ナビレンスは、アクセスしやすく、ユニバーサルな新しいインテリジェンスデジタルサイネージを利用して、「視覚障害者の自立的な移動を支援する」という課題にソリューションを提案しています。視覚障害者が未知の環境であっても、方向情報を得てサイネージが設置された対象物まで正確に辿り着き、更にアクセシブルな方法で情報を得ることができます。これら全ては、ユーザーが使用するスマートフォンを利用して行われます。
「ナビレンス スマートシティにおけるアクセシビリティ の推進 」ビデオリンク
このシステムは、既存の看板やサインに設置した新しい人工コード(またはマーカー)をリアルタイムに検出することに基づいています。QR コードよりもはるかに優れた技術的特性を備えたコードは、スタートアップ企業の Neosistec とアリカンテ大学による5年間の研究期間を経て開発され、特許を取得するに至っています。
ナビレンスコードは、長距離から高速で読み取ることができ、デバイスでフォーカスしたり、画面のフレームに収める必要がありません。そのため、視覚障害のあるユーザーは、コードの設置位置を正確に知る必要なくコードを検出することができます。これらは全て、無料の ナビレンスアプリを介してあらゆるスマートフォンで使用できるよう設計された人工視覚アルゴリズムで実行されます。ユーザーは、歩きながらアプリを利用してコードを読み取ることができ、コードに関連づけられた情報が得られます。
ナビレンスコードに挿入されたコンテンツが視覚障害者ユーザーにどのように役立つのでしょうか?
ナビレンスコードは以下の2つの方法で使用されます。
視覚障害者ユーザーがコードの設置された場所や対象物に向かって正確に移動できるよう音声やサウンドで誘導。
場所や対象物から提供されるサービスなどの情報、例えば、次のバスの発車時刻、美術館の作品の音声ガイド、公共施設などで手続きを行う手順や場所などをアク セスしやすい説明情報として提供。
さらに、ナビレンスは同一のコードを使用して、全てのユーザーに向けて情報アクセシビリティを向上させることができます。同じ情報をさまざまな方法(音声、手話ビデオ、簡易テキスト、ピクトグラム、マルチメディアなど)で提供でき、ユーザーはどのような方法でコンテンツを受け取るかをアプリで選択できます。また、アプリは世界37言語に対応しており、ユーザーの使用しているスマートフォンの設定言語で情報提供されます。
ナビレンスコードは、印刷するだけで既存の看板やサインなど、さまざまなパーツに容易に融合でき、あらゆるユーザーに向けたアクセシブルな情報提供を実現します。
例えば、バス停に設置されたコードにより、ユーザーはバスを待つ正確な場所に到着できます。GPS で起こる最後の数メートル問題を解決し、さらに停留所を通過するバス路線情報、通過時刻、事故の発生や運行状況などリアルタイムに取得できます。このように、公共交通機関でのコード設置は視覚障害を持つ人々の自立性を向上させ、より包括的でアクセスしやすい世界を実現させるために不可欠です。
ナビレンスでアクセスしやすいバス停へ。ビデオリンク。
また、ナビレンスコードが博物館や公共施設、建物内で使用される場合、その空間や芸術作品を視覚的に確認できる人が行うと同じに、視覚障害のあるユーザーも建物内を自立的に移動し、正確に目的としたポイントへ到達することができます。
視覚障害者によるスペイン・カルタヘナローマ劇場博物館の単独訪問体験ビデオリンク。
このシステムは、ONCE(スペイン視覚障害者協会)及びその当事者、また世界の重要な 視覚障害者協会(英国 RNIB、オランダ Bartimeus、アメリカ Lighthouse Guild など)によりテスト、検証されています。2018年3月の本格的な開始以降、ニューヨーク地下鉄、バルセロナの地下鉄164駅と2,400バス停、ロサンゼルス地下鉄など、世界中の数多 くの様々な公共交通システムで急速な実装が実現しています。また、多くの博物館、公共施 設、さらに病院でも実装が進んでいます。
プロジェクトの使命、差別化、そして革新性
チャレンジ
世界保健機構(WHO)によると、世界中の視覚障害者は2億8,500万人であり、そのうち3,900万人が全盲であると推定されています。人口の増加と高齢化により、視覚障害者が増えるリスクが高まるため、世界規模で解決しなければならない課題です。
テクノロジーは、この課題に向かう意味で非常に重要な質的飛躍をもたらしました。ス マートフォンは視覚障害者の自立性を改善する上で、大きな役割を担うようになっています。しかし、技術の進歩にも関わらず、視覚障害者が初めての環境で完全に自立的移動を行えるか、という問題は解決していません。大きな理由としては、公共のスペースに設置されている看板やサインが認識できないものであるためです。
この問題は、地下鉄や鉄道駅、病院、ショッピングセンター、博物館など、さまざまな場所で散見されます。
ナビレンス は、新しいサイネージとして利用される、という考えから生まれました
このプロジェクトのチャレンジは、視覚障害者が使用するスマートフォンのカメラで読み取ることができるコードまたはマーカーを開発し、看板やサインが設置された空間で視覚的認識を行うのと同様の情報獲得を可能にすることでした。
一番の目的は、全盲やロービジョンなど視覚障害者のためのより包括的な世界を実現することです。その世界とは、まずは交通機関(バス停や鉄道、電車駅など)や病院、博物館、ショッピングセンター、行政施設や学校など公共の場所をよりアクセスしやすくし、ユーザーが可能な限り自立的に行動する選択肢を提供するというものです。
ナビレンスは、視覚障害者がスマートフォンだけで読み取って使用できる新しい人工マーカーを開発するため、長い時間研究を重ねてきました。、Nuevos Sistemas Tecnológicos(Neosistec)とアリカンテ大学は, 2012年から2017年の5年間を共に研究に費やし、先に述べた課題を解決できる全く新しい人工コードを完成させました。
視覚障害のあるユーザーが ナビレンスコードを使用できるのはなぜでしょうか?
QR コードなど、他のコードとは異なりナビレンスコードは視覚障害のあるユーザーでも読み取りが容易になります。これは点字や QR コードのように、コードがどこにあるか正確に知る必要がなく、それに向かってフォーカスする必要もないからです。また、ナビレンスコードは画面上のフレームに収める必要もありません。
これらは全て、ナビレンスコードが、遠距離から(QR コードの12倍の距離)、最大160度の広角に対応、超高速読み取りで移動中でも読み取れる、という機能によるものです。
視覚障害のあるユーザーは、ナビレンスコードとスマートフォンのカメラを利用することにより、コードの所在を知り、正確にそこへ移動でき、そして理解可能な情報を受け取ることができます。
そして、実装の際には、コードを印刷して既存の看板や標識に追加するだけで済みます。スケーリングが容易ゆえに迅速で持続可能な実装の実現は大きな利点になります。
ナビレンス テクノロジーの利点
視覚障害者ユーザーに対象物の位置、方向、それまでの距離をセンチメートルの精度で知らせる。
ナビレンステクノロジーは人工視覚に基づいており、晴眼者が視覚障害者をガイドするのと同等の機能を提供。
最大160度までの角度がついた状態からも検出できるため、通常の標識看板と同じ高さに設置することができ、人で混雑した環境での読み取りが容易。
従来の看板標識と同様のメンテナンスが必要とされるため低メンテナンスコスト。
実装の効率と迅速さが優れているため、大規模な実装が可能。
静的情報と動的情報を挿入でき、常に更新が可能。
リモートで情報を変更できるため、ユーザーに常にリアルタイムな情報を発信。
全ての人がアクセスしやすい様々な方法での情報提供と37言語に対応しているため、包括的で普遍的なサイネージ。
プロジェクトの革新性
ナビレンス のイノベーションは、独自の技術的特性を備えたデジタルマーカーと人工視覚に基づく効果的なアルゴリズムの開発にあります。この双方が結合することによって、ユーザーは自身のスマートフォンを使用するだけで、屋内での正確な案内ガイダンスやサイン標識を認識できるようになります。
QR コードや Data Matrix などの高密度マーカーは、大量の情報を含んでいますが、コードのコーナーを基本とした検出技術が適用されているため、近距離でしか検出できません。したがって、画像が鮮明でない(画像まで距離がある、または動きがある)場合、検出が不可能になります。つまり、検出には、近距離からカメラが動かない状態でなければなりません。一方、長距離マーカーは遠くからでも検出が可能ですが、それに含めることができる情報量がはるかに少なくなります。
ナビレンス の専用マーカーは、カラーの前進的な使用により、長距離と高密度という両方の特性を持ち合わせています。ほとんどのマーカーはモノクロ( 黒と白)ですが、ナビレンス は4色(通常はシアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)を使用しエンコードするため、コード密度が2倍になり、組み合わせ数が2N から4N に劇的に増加します。読み取りと高速処理を成功させるのは、様々な照明環境のもとでマーカーを読み取ることができる強力な人工視覚アルゴリズムによって行われるカラー処理です。
ナビレンスは、コーナーではなく色を塊で検出できるカラーベースの人工マーカー技術を改善することで、スケールの変化やカメラの動き(画像の鮮明度は検出に影響しない)に堅実に対応でき、長距離からの検出が可能です。
視覚障害者ユーザーが、様々な場所で完全に自立移動できるよう、ナビレンスの実装は視覚的確認を行う人が利用する看板サインと同様の低コストを実現します。また家庭用のプリンターで印刷することも可能です。
コードの読み取りは3D オーディオシステムで補完されます。全盲のユーザーは、このオーディオシステムによりヘッドフォンを使用せずにコードまでの距離、コードの位置、方向を未知の空間で認識することができます。
ナビレンスコードは、これら全ての特徴を兼ね備えた世界初の人工マーカーです。現在、このプロジェクトで実現ししているソリューションと同等のソリューションを提供する製品、または企業はありません。
技術的特徴について
長距離読み取り: 20cm のコードは17m の距離から検出
広角対応の読み取り: 水平方向、垂直方向の両方の軸に対して160度に対応
広範囲の照環境に対応
超高速読み取り: 標準的なモバイルデバイスでは毎秒30フレームを処理
動作中でも検出可能
高精度の距離測定: コードからユーザーデバイスまでの距離は cm の単位で測定
カメラのフォーカス、フレーミング不要
3D ソニフィケーションについて
このシステムは視覚障害者向けのスクリーンリーダーに着想を得ている
左右はダブルトーン、高低は周波数の変化でエンコード
マーカーまでの距離はトーンの繰り返し頻度によりエンコード
他のソニフィケーションモデルとは異なり、ナビレンスはヘッドセットが不要
これらの革新的機能は、スペイン特許商標庁により認められた"Método de detección y reconocimiento de marcadores visuales de largo alcance y alta densidad”(長距離、高密度視覚マーカーの検出および認識方法: Exp P201631625)に含まれており、PCT の手続により国際的に特許保護されています。2023年12月現在、スペイン、米国、ロシア、日本を含む世界54カ国で特許が認められています。
プロジェクトの発展、ユニバーサルサイネージへ
ナビレンス は、視覚障害のある人々がよりアクセスしやすい世界を実現するために邁進しています。視覚障害者ユーザーがさらに多くの空間や対象物にアクセスできる、という目標を達成するためには、特定のニーズに向けた技術から全ての人に役立つ技術へと変化することが必要です。それゆえ、あらゆる場所でインクルージョンを実現し、アクセシビリティを改善するため、ユニバーサルデザインの観点で様々な機能を追加しています。
プロジェクトの成果
ナビレンスは、視覚障害者へ向けた包括的でアクセスしやすい世界において参考となるテクノロジーとしての地位を確立しています。高い技術力、簡単な使い方、別のハードウェアを必要としない実装のシンプルさにより、大規模実装も容易な製品となっています。
社会的観点からは、ナビレンスの当初の主な目的ははるかに超えています。ユーザーの納得と世界的に主要な専門的団体のサポートにより製品として成功したナビレンス は、徐々に市場の信頼を獲得してきました。
重要な成果的結果とその指標:
ナビレンス アプリ及びナビレンスGOアプリは2024年7月31日現在、世界で43万7388ダウンロード数を記録している。
ナビレンス は、世界中で200以上の実装の実績がある。現在、以下の使用例でスペイン全土、アメリカ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、オランダ、アイスランドおよび日本で存在感を示している。
交通機関・地下鉄、バス、電車、トラムなど
博物館
観光ルート
公共施設
ショッピングセンター
見本市、イベント
個人使用の場所や品物
道標識
食品
2018年から2020年の間に市場実績の売上高を300%増加。賞や機関の支援もありベンチャーキャピタルから完全に独立した。
ナビレンスアプリは世界60か国以上37言語で使用されている。
10か国、30以上の障害者団体から積極的な協力を受けている。
プロジェクトの社会的インパクト
ナビレンス は視覚障害者の未知の環境における自立性という問題を解決するため開発されたため、プロジェクトの開始時からインクルーション、アクセシビリティ、ユニバーサルデザインを原則に発展してきました。
そのため、ナビレンス チーム内にはアクセシビリティの専門家や視覚障害当事者が含まれており、さらに開発段階と製品検証の双方で ONCE の専門家やそのユーザーと協働しています。
ナビレンスは当初、視覚障害者が病院、博物館、地下鉄などの未知の環境での自立性を向上させ、生活の質と独立性を向上させるテクノロジーとして登場しました。
プロジェクトが発展する中で、あらゆるユーザーが様々な方法で情報にアクセスできるよう、より幅広い機能と多様性を持ち合わせた製品へと変化していきました。
これにより、同一のコードでユーザーは様々な形で情報を取得できます。ユーザーは、音声ガイダンス(視覚障害向け)、手話ビデオ(聴覚障害向け)、アクセシブルルート(車椅子利用者向け)、簡易テキストまたはピクトグラム(認知障害向け)のオプションから情報取得の形式を選択することができます。
さらに、ユニバーサルデザインの一環として、アプリはユーザーのスマートフォンで設定されている言語で情報を提供し、現在37言語に対応することで、あらゆる人から言語の壁を取り除きます。
ナビレンスは、アクセシビリティに関係する他の社会的団体、協会、組織などのサポートや協力を受けています。
具体的な協力例として、スペインでは ONCE、CEAPAT、CERMI、赤十字、スペイン国外では RNIB(英国王立盲人協会)、Lighthouse Guild(視覚障害者協会、ニューヨーク)ウィスコンシン視覚障害センター(アメリカ)、BARTIMEUS(視覚障害者協会、オランダ)、BIAVI(視覚障害者協会、アイスランド)、アイコラボレーション神戸、NEXT VISION(日本)などです。
これらの協会や団体からは、ナビレンスを関連施設に実装するとともに、行政や企業に向けたシステムのプレゼンテーション、ユーザー向けのワークショップなどを行うという形で支援を受けてきました。それに加え、メディアやポッドキャストなどを通じて情報提供を行うなど、彼らは非常に貴重なテクノロジーの理解者です。
例えば、RNIB の尽力で視覚障害者が製品の栄養や原材料の情報にアクセスできるようKellogg'sのパッケージにナビレンスコードを組み込むなどのプロジェクトが実現しており、Lighthouse の支援では、ニューヨークのバス停での実装、ウィスコンシンの視覚障害者センターの協力で「無料コードキット・学校用」が作成され、視覚障害者がコードを利用したフラッシュカードで数学を学ぶ試みも実行されています。
ナビレンスには、システムに関する提案、評価の提供や新機能のテストを担当する多数のユーザーグループも存在します。
これらのコミュニティとのコラボレーションで「パーソナルコードキット」が作成されました。これを利用することでユーザーは個人的な所有物やスペース(例えば、タッパーウェア、スパイスの瓶、衣類などのアイテム)にコードをつけ、その内容や賞味期限などに関する情報を関連づけることができるようになりました。
ナビレンスは、これまで利用が難しかったサービスを自立的に利用できるように変化させることで、社会的に大きなプラスの影響を与えるテクノロジーです。しかし、このテクノロジーに最大の価値を与えるのは、質的な改善に研磨することでユーザーの満足度を向上させることに間違いありません。
追記資料
日本でのライセンス実装運用ケース 2023年実績
宮城県視覚障害者情報センター
東京済生会中央病院
富士ハーネス日本盲導犬センター
神戸アイセンター病院
ポートライナー三宮駅
ポートライナー医療センター駅
ポートライナー神戸空港駅
神戸空港
九州国立博物館
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